創作は常に冒険である。所詮は人力を尽した後、天命にまかせるより仕方はない。
日本の小説家、芥川龍之介。
23歳の時に代表作となる「羅生門」を発表するなど、若くしてその才能を開花させた日本を代表する文豪です。彼の業績を記念してつくられた芥川賞は現在でも新人作家の登竜門とされています。
今回はそんな芥川龍之介の名言を紹介し、その言葉たちからの学びである「日常に感動する生き方」について考察します。
芥川龍之介とは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介
生まれてすぐ伯母に育てられる
芥川龍之介は1892年に東京で生まれます。実家は牛乳の製造業を営んでいました。しかし龍之介が生まれてすぐに母親が精神を病んでしまい、伯母の芥川フキの家で育てられることになりました。
教育熱心だった伯母の影響もあり、学校に通う前の歳から龍之介は文学に親しむようになります。
そして11歳の時に母親が亡くなると、父親は龍之介を引き取ろうとしますが、元々芥川家との仲がよくなかったこともあり、龍之介の親権をめぐり裁判で争うまでになります。
学校での成績は優秀な少年時代
そして最終的に父親は裁判に負け、龍之介は正式に芥川家に養子に入ることとなりました。
中学校での成績が優秀だった龍之介は、当時の制度により試験を受けることなく、現在の東京大学の前身予備校であった第一高等学校に入学します。
そして22歳の時に東京帝国大学(現在の東大)毎年数人しか合格者が出ないと言われていた難関の英文学科に合格します。
大学時代に羅生門を発表
その翌年には高校の同期であった菊池寛や久米正雄らと共に同人誌「新思潮」をつくります。この時から龍之介の執筆活動が始まりました。
そして1915年、23歳の時に大学の文芸雑誌であった「帝国文学」に自身の代表作の一つとなる「羅生門」を発表します。
この時期に友人の紹介で夏目漱石と知り合った龍之介は門下生として漱石が開いていた勉強の会合「木曜会」に参加し、漱石をとても尊敬し慕うようになります。
35歳で命を絶つ
そんな漱石に24歳の時に書いた「鼻」が絶賛されると、龍之介はますます小説の道にのめり込んでいきます。大学も高成績で卒業した後は海軍の機関学校で英語の教官として就職します。
その時期も執筆活動をやめなかった龍之介は、その後毎日新聞に転職し、専業作家として本格的に小説家としての道を歩み始めます。
のちに結婚し子どもにも恵まれた龍之介ですが、次第に病気がちになり、精神も弱っていくようになります。そして1927年に睡眠薬を飲み服毒自殺。35年という短すぎる生涯を終えました。
芥川龍之介の名言
幸福とは幸福を問題にしない時をいう。
経験ばかりにたよるのは消化力を考えずに食物ばかりにたよるものである。同時に又経験を徒らにしない能力ばかりにたよるのもやはり食物を考えずに消化力ばかりにたよるものである。
我々はしたいことの出来るものではない。ただ、出来ることをするものである。
我々の内部に生きるものを信じようではないか。そうして、その信ずるものの命ずるままに我々の生き方を生きようではないか。
道徳は常に古着である。
人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ。
必要な思想は三千年前に尽きたかもしれない。我々はただ古い薪に新しい炎を加えるだけであろう。
言葉から見た、芥川龍之介てこんな人!
生きる。ということを追求した人
芥川龍之介の小説は人間の利己心や欲望など、誰しもが持っている醜い部分をえがいていることで有名です。
特に教科書にも載るくらいに代表的な児童小説「蜘蛛の糸」は罪や欲望、人間の弱さなど、大人でも深く考えさせられる内容です。
若くして自ら命を絶つ道を選んでしまった龍之介ですが、彼の「我々の内部に生きるものを信じようではないか。そうして、その信ずるものの命ずるままに我々の生き方を生きようではないか。」と言う言葉にもあるように、人間というものを観察し、思考巡らせその本質を感じ取っていたからこそ、生きることの意味を誰よりも考えていたのかもしれません。
生きるということを文学の中で追求した人、それが芥川龍之介という人でした。
芥川龍之介の名言からの学び。[日常に感動する生き方]
小さなことに喜びを見つける
今回の芥川龍之介の言葉で印象的だったのが「人生を幸福にするためには、日常の瑣事(さじ)を愛さなければならぬ。」という言葉でした。
服毒自殺でこの世を去った芥川龍之介。遺書には「将来に対する、ただ漠然とした不安」とう内容が書かれていたといいます。その理由は明確にはわからずも、病気がちだったり身内の借金の肩代わりをさせられたりと、様々事情があったと考えられています。
生きることに絶望を感じたかのような芥川龍之介の遺書ですが、それとは反対にとてもポジティブな内容の言葉もあり、今回選んだ名言もその一つです。
現代社会はとても豊かになりました。特に先進国と言われる日本は格差が広がっていると言われていますが、食べるのに困るという状況は昔に比べて限りなくゼロに近いと思います。
物理的に生きることが易しくなった世の中でも、幸福にならない、心が満たされないのは、世界幸福度ランキングで日本が50位以下の下位にいることでも明らかでしょう。
幸福感は人によって違うと思いますが、人間は欲望がある生き物です。その欲が満たされた時に満足感、一種の幸福感を感じます。
そしてそれはお金といった外部要因ではなく、自分自身の内面によって決まるのだと今回の芥川龍之介の言葉に触れて感じさせられました。
日常にある些細な状況を愛し感謝できるか。毎日3食困らず食べられる、そんな当たり前に心からありがたみを感じれるか。
それができた人は一つの幸福感を手に入れ、当然のことだと切り捨てる人は更なる欲望にかられるでしょう。何に喜びどう生きるかはその人次第であり、与えられた選択肢です。
小さなことに喜びを見つける
何気ない日常、小さな事柄にでも喜びを見いだせることが、幸福への一つの道であると、日本を代表する小説家、芥川龍之介の名言から学びました。