夢はでっかく根はふかく
独特な作風の書と詩で知られる相田みつを。
「いのちの詩人」とも呼ばれる彼の言葉は、多くの人の心を動かす力に溢れていまいた。
今回はそんな相田みつをさんの名言を紹介し、その言葉たちからの学びである「人を動かす力は感動だけ」について考察しました。
相田みつをとは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介
不器用で一本気な性格
相田みつをさんは1924年、6人兄弟の三男として栃木県で生まれます。父親は刺繍職人をして生計を立てていました。しかし家は貧しく、上の2人の兄は小学校卒業後、進学を諦め職人となり、家計を助けます。
そんな2人の兄のおかげでみつをさんは中学校に進学することができました。1937年に日中戦争が起こると、お兄さん2人は出兵することとなってしまいます。
出兵前に兄は「世間の見てくれや体裁よりも、自分の心の納得する生き方をしてくれ」という言葉をみつをさんに残したと言います。そんな兄の言葉もあってか、みつをさんは一本気でまっすぐな性格に育ちます。
19歳で書家を目指す
当時の中学校は軍事教練が必修でありました。軍から派遣された教官にも、みつをさんは物怖じせず自分の意見を主張します。そんな彼を教官たちは疎ましく思い、教練不合格にしたといいます。
教官に嫌われたみつをさんは進学を諦め、中学校を卒業した後は歌人の山下陸奥に弟子入り、また生涯の師となる曹洞宗高福寺の武井哲応と出会い、禅を学びます。
そして19歳になった頃、本格的に書家を志し、岩沢渓石に師事します。そして修行を積み、1954年から7年連続で書道の最高峰とされる毎日書道展に入選するまでになりました。
ストイックに書を極める
古典書道において技巧派として活躍していたみつをさん。しかし閉鎖的な書の世界に違和感を抱くようになり、次第に現在よく知られているような丸みを帯びた独特の書体で、短く自らの詩を書く作風に移行していきます。
みつをさんは結婚し、2人の子どもにも恵まれますが、純粋な書だけで生計は立てられず、ろうけつ染めで風呂敷などを作ったり、近くの商店の包装紙のデザインなどで生活費をなんとか捻出していました。
そんな生活の中でも書に対してはとてもストイックで、半紙は最高級品を使い、たった一文字書くだけでも何百枚、何千枚と書き直しをしたと言います。
「にんげんだもの」出版
そんな苦しい生活が長く続きますが、ついに転機が訪れます。みつをさんの詩をたまたま見たファッションデザイナー松本瑠樹さんと出会い、彼の懸命な働きかけによって、のちにミリオンセラーとなる「にんげんだもの」を出版します。この時みつをさんは60歳になっていました。
これがきっかけとなり、みつをさんの詩は多くの人に広く知られるようになりました。松本さんは当時無名のみつをさんの本を出版してくれるように、大半の部数は自分が買い取ることを条件に出版社にお願いをしたと言います。
その後の詩集もベスロセラーとなるなど、ようやく詩人書家として日の目をみた矢先、道で転んで足を骨折、さらにそのあと脳内出血を起こし、それが原因で67歳でみつをさんはこの世を去ることとなりました。みつをさんは最期まで展覧会への意欲を見せるなど、仕事に対して情熱を燃やしていたと言います。
相田みつをの名言
やれなかった やらなかった どっちかな
しんじつだけが魂をうつ
私がこの世に生れてきたのは私でなければできない仕事が何かひとつこの世にあるからなのだ
感動いっぱい、感激いっぱいのいのちを生きたい
あなたの心がきれいだから なんでもきれいに見えるんだなあ
出逢いが人間を感動させ感動が人間を動かす 人間を動かすものは難しい理論や理屈じゃない
しあわせはいつも自分のこころがきめる
相田みつをの名言を引用・参考にした文献
言葉から見た、相田みつをてこんな人!
自分にしかできないことをやり続けた人
みつをさんが世間に知れるようになったのは60歳の時。それまでの間、生活に困窮しながらも自分の書を書き続けました。
長年にわたり彼が書をやり続けられたのは、それが自分にしかできない仕事だと心の底から感じていたからです。だから自らにも常に厳しく対し、納得がいくまで何枚も書き直し、作品には最高の物を使た。これは自分にしかできないコトに誇りを持っていたことの表れでしょう。
みつをさんは金銭的にはとても貧しく、やっと「にんげんだもの」を出版してもそれから7年しか生きられませんでした。
しかし「しあわせはいつも自分のこころがきめる」という彼の言葉にもあるように自分が決めた道を一心不乱に進み続けたみつをさんの人生は幸せそのものだったはずです。
相田みつをの名言からの学び。[人を動かす力は感動だけ]
理論、理屈を超えた何かが感動を生む
今回、みつをさんの言葉で印象的だったのが、「人間を動かすものは難しい理論や理屈じゃない」という言葉でした。
統計やマーケティング、またはAIの発達により人間のデータは常に蓄積されていきます。しかし人の行動をある程度予測できるようになっても、心の底から感動するものは理論理屈から出てくるものではないと信じたい。
飛行機で行けばすぐ着くのにあえて自転車を使ってみたり。人間は一見、無駄や無意味だと感じるものに心動かされ、価値を見出せる唯一の生き物です。
理論、やり方、技術的な部分も大事ではありますが、みつをさんの「しんじつだけが魂をうつ」という言葉にもあるように、人の心を動かすのはそれらを超えた普遍的なもの。実はとてもシンプルなものだと感じさせられました。
人生を削り出した自らの言葉で多くの人の心を動かした相田みつをの言葉からそれを学びました。