自己自身を選ぶための戦い、その獲得の行為を表す言葉、これが悔い改めである。
デンマークの哲学者、セーレン・キルケゴール。
実存主義の創始者とされ、自分の生い立ちから葛藤と苦痛を感じる期間を経ながら、自身の思想を獲得し、近代哲学にも大きな影響を与えました。
今回はそんなセーレン・キルケゴールの名言を紹介し、その言葉たちからの学びである「主体的に今を生きる」について考察しました。
セーレン・キルケゴールとは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介
父親の影響を受け将来は牧師を目指す
キルケゴールは1813年にデンマークの首都、コペンハーゲンで生まれます。父親は毛織物商人の仕事をしており、家庭は裕福な環境だったといいます。
そんな父親は熱心なキリスト教徒で、子どもたちの教育にも厳格でした。そして子どもたちには将来牧師になることを願っていました。
父の不信仰を知り、落胆
キルケゴールは父親の思いを受け、17歳の時にコペンハーゲン大学に入学し、神学と哲学を学びます。
しかし、信仰熱心であったはずの父親が、幼少期に貧しい環境を憂いで、神を呪ったことを知り、また呪った罪の報いとして子どもたちは34歳までに亡くなると考えていました。
それを聞いたキルケゴールはひどくショックを受けます。この時の感情を「大地震」と表現したキルケゴールはその後、酒に溺れるような生活を送るようになります。
実際に7人兄弟の内、キルケゴールと一番上の兄以外は34歳までに亡くなったといわれています。
哲学者として活動を始める
自身の罪深さに葛藤していたキルケゴールは、その後婚約するも一年足らずでそれを破棄してしまいます。
その後はドイツのベルリンに行き、オペラや哲学の講義を受け、29歳の時にデンマークに戻ると、哲学者として執筆活動に注力します。
キリスト教会と白熱した論争を展開
30歳の時には代表作である「あれかこれか」を発表し、それから3年の間に「反復」や「おそれとおののき」など、多数の著作を発表しました。
その後はこれまでのキリスト教や教会のあり方に疑問を呈し、教会と激しく論争するようになります。そしてそんな最中、キルケゴールは突然路上で倒れ、42歳という若さで亡くなってしまします。
セーレン・キルケゴールの名言
愛はすべてを信じ、しかも欺かれない。愛はすべてを望み、しかも決して滅びない。愛は自己の利益を求めない
ほんとうに黙することのできる者だけが、ほんとうに語ることができ、ほんとうに黙することのできる者だけが、ほんとうに行動することができる
私をなにかに分類しようとしているなら、それはあなたが私を否定しようとしているということだ。
私にとって真理であるような真理を発見することが必要なのだ。しかもその真理は、私がそのために生き、そのために死ねるような真理である
祈りは神を変えず、祈る者を変える
人生は、後ろ向きにしか理解できないが、前を向いてしか生きられない
真実はいつも少数派にある、少数派はいつも多数派に優るのである。なぜなら、少数派は真に自分の意見を持っているからだ。多数派は意見を持たない一団によって形成されており、その強さはまやかしである。
言葉から見た、セーレン・キルケゴールてこんな人!
自分の真理を求めた人
デンマークで活躍した哲学者、セーレン・キルケゴール。彼が残した最も有名な思想が、実存主義でした。
キルケゴールが唱えた実存主義は、画一化し、個性が埋没していく現代社会において、人間の自己を見つめ直し、主体性を持つことの大切さを語っていました。
厳格な父の不信仰により、自分の人生に絶望し、自分を見失っていたキルケゴールにとって、この思想は彼の人生そのものだったのかもしれません。
それは彼の「私にとって真理であるような真理を発見することが必要なのだ。しかもその真理は、私がそのために生き、そのために死ねるような真理である」という言葉からも感じることができます。
絶望的な精神状態になりながらも、自分の人生を生きようと、自らの思想を記し、既存の慣習や権力と論争を繰り広げたセーレン・キルケゴールは、まわりに流されない自分だけの真理を求めた人でした。
セーレン・キルケゴールの名言からの学び。[主体的に今を生きる]
生きることは今しかできない
今回のキルケゴールの名言で印象的だったのが「人生は、後ろ向きにしか理解できないが、前を向いてしか生きられない」という言葉でした。
キルケゴールは「主体性こそ真理である」という言葉も残したほどに、自分の生き方を自ら選んで決断し、生きるということを大切に考えました。
その視線は常に過去ではなく現在生きている「自分」に注がれているのだと感じさせられます。
しかし生きていると過去の出来事に心が向かってしまうことも珍しいことではないと思います。後悔などのマイナスな記憶を思い出し、落胆する。または過去の成功を振り返り、思い出に浸る。
良いことも悪いことも、現在は過去の出来事が積み重なったものです。過去がなければ決して現在はない。しかし、過去は過ぎ去ったものでしかなく、そこに変革は起こせません。
過去から学ぶことはたくさんありますが、主体的に生きるべきは今、現在の自分であり、変えられるのも今だけです。
今の決断と行動が、未来の自分の経験となってくれる。「生きる」とは今という瞬間にしか成しえないこと。であるならば、過去ではなく今という瞬間に注力して前を向くことが大切なのだと、キルケゴールの言葉に触れて感じさせられました。
生きることは今しかできない
デンマークの哲学者、セーレンキルケゴールの名言からそれを学びました。