哲学の課題がなんであり、その目的がなんであるかを理解するのは理性だ
ドイツの哲学者、ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル。
フランス革命、ナポレオン侵攻のあった激動のヨーロッパ史の最中に生き、弁証法を体系化させた歴史的な哲学者です。
今日はそんなヘーゲルの名言を紹介し、その言葉から学びである「依存しない生き方」について書いていきます。
ヘーゲルとは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介
ドイツの中流家庭に生まれる
ヘーゲルは1770年にドイツのシュツットガルトで生まれます。父親は政府の書記として公務員をしており、ごくごく一般的な中流家庭で育ちました。
母親は教育熱心で、ヘーゲルもその影響を受け熱心に勉学に励む子どもでした。5歳の時にラテン語学校に入学すると、この頃から哲学や文学の本を読んでいました。
7歳になるとドイツの教育機関であるギムナジウムに進学します。学校でも常に勤勉であり、模範生として優秀賞を与えられていたといいます。独学で数学を学び、歴史や法律、シェイクスピアを好んで読むなど幅広い学問に触れます。
大学を卒業後はスイスで家庭教師
18歳でギムナジウムを卒業したヘーゲルは故郷を離れ、テュービンゲン大学に入学します。そこで神学と哲学を中心に勉強しました。神学教育で有名なこの大学では修道生活や厳しい規律が設けられていました。
ヘーゲルはこのような環境に批判的でありながらも、大学で出会った友人たちと有意義な学生生活を過ごします。またその中でキリスト教に対して批判的な感情を抱きながらも、宗教への関心を深めていきました。
23歳で大学を卒業すると、スイスで家庭教師の仕事を始めます。家庭教師をしながらも政治や哲学、宗教の研究を続け学者として生きていく道を模索していました。
31歳で大学の講師に
その中でスイスの政治に対する不信感や、暴力的に変異していったフランス革命への懐疑心、また変わらず腐敗的なキリスト教への批判などもとに独自の思想を形成していきます。
31歳になったヘーゲルは論文が評価され、ドイツのイェーナ大学の講師に就任します。念願の学者としての入り口に立ったヘーゲルは精力的に研究を続け35歳で助教授に昇進しました。また37歳の時に代表的著書である「精神現象学」を刊行します。
しかしフランスの皇帝ナポレオンがドイツに侵攻してくると、イェーナ大学は閉鎖を余儀なくされ、ヘーゲルは1年間新聞編集の仕事をした後、ニュルンベルクのギムナジウムで校長として働くことになります。
46歳で大学教授に就任
そして46歳の時にハイデルベルク大学の教授に就任し、翌年にはベルリン大学で正式に教授となりました。大学でヘーゲルの授業はとても人気を集め、教育者として学生の成長に注力していまいした。
そんな彼の授業は学生達の学問に対する意欲にとても大きな影響を与え、ヘーゲル哲学も大学で活発に論議されるようになりました。ヘーゲルはそんな実績を評価されベルリン大学の総長にも就任します。
しかし1831年、ヘーゲルが61歳の時にインドで大流行していたコレラがドイツにも蔓延し、ヘーゲルもそれに感染してしまいます。そして体調を崩すと、容体は回復することなくそのまま息を引き取ることとなりました。
ヘーゲルの名言
真理は全体である。全体とは自らの展開を通じて自らを完成する実在のことにほかならない。
偉人とは、その時代の意志を言葉に表し、その意志が何かを時代に語りかけ、そしてそれを達成できる人物である。その人物の行うことは、その時代の核心であり、本質である。偉人が時代を実現させるのだ。
歴史を学ぶと、我々が歴史から学んでいないことが分かる。
とらわれない心を持った人の単純なふるまいとは、信頼にみちた確信をもって、公に知られた真理にたよること、そしてその固い基礎の上に自分の行為の仕方と生活上の確固たる態度をうちたてることである。
この世で情熱なくして、達成された偉大なことなど無い。
真理をめぐる重要な点は、真理を実体としてでなく、主体としてもとらえ表現することである。
自由な人間は決して妬まない。偉大なものを喜んで受け入れ、そうしたものが存在することが、うれしいと喜ぶ。
言葉から見た、ヘーゲルてこんな人!
時代を読み、表した人
哲学者として後の歴史にも多くの影響を与えたヘーゲル。なかでも彼の代名詞となっているのが弁証法です。
ソクラテスの時代からあった対話や問答術として捉えられていた弁証法を論理的に発展させ、体系化させた第一人者です。※弁証法の解説はこちらから
ヘーゲルが生きた時代はフランス革命を代表するように大きな時代の変革期でした。そんな流動的な時代の中で彼の思想は形成され、その思想はそのまま時代の意思を体現させていたのかもしれません。
それは彼の「偉人とは、その時代の意志を言葉に表し、その意志が何かを時代に語りかけ、そしてそれを達成できる人物である。その人物の行うことは、その時代の核心であり、本質である。偉人が時代を実現させるのだ。」という言葉からも感じ取れます。
時代を読み、表した人。それがヘーゲルという人でした。
ヘーゲルの名言からの学び。[依存しない生き方]
真理、人、未来を信じる意思が今を作っていく
今回のヘーゲルの名言で印象的だったのが、「とらわれない心を持った人の単純なふるまいとは、信頼にみちた確信をもって、公に知られた真理にたよること、そしてその固い基礎の上に自分の行為の仕方と生活上の確固たる態度をうちたてることである。」という言葉でした。
人間は共存する生き物です。物質的にも精神的にもひとりで生きることは困難であると思わされます。
しかし現代をみて感じるのが共存ではなく「依存」の強さです。先の見えない不安。国、人、仕事、自分の未来、そんな様々な不安から自己保身を考え、お金や権威、立場や人に依存する。
依存しない生き方はあるのでしょうか。
難しいことですが、ヘーゲルの言葉で感じたのは信頼感の大切さでした。
信じることが難しい世の中で、信頼できないから現状の資産にとらわれる。しかし依存ではなく共存とは共に存在することです。共存するには信じることなしには始まりません。そして未来を信じる人は希望的で躍動的であり、物事にとらわれない生き方をしていると感じさせられます。
真理、人、未来を信じる意思が今を作っていく
混乱の時代を生きた哲学者、ヘーゲルの名言からそれを学びました。