ハンナ・アーレントの名言からの学び。[無知は罪となりうる]

ハンナ・アーレントの名言からの学びのイラスト1 偉人の名言

言論を伴わない活動は、いわば、その主語を失う。

ドイツ生まれのユダヤ人哲学者、ハンナ・アーレント

全体主義の起原」や「人間の条件」の著者で知られ、特に全体主義の起源では、強い悪の動機よりも無思想によってもたらさられる悪の恐ろしさを説き、大きな話題となりました。

今回はそんなハンナ・アーレントの名言を紹介し、その言葉たちからの学びである「無知は罪となりうる」について考察します。

ハンナ・アーレントとは?どんな人? 生涯・経歴を紹介

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  • 裕福なユダヤ人家庭に生まれる
  • 大学で哲学を学ぶ
  • ナチスの台頭により行き場を失う
  • 全体主義の起源を出版

裕福なユダヤ人家庭に生まれる

ハンナ・アーレンとは1906年にドイツで生まれます。家はドイツ系のユダヤ人家系で父親は電気工事の会社で働いていまいした。またギリシアやラテン文学に関心高く教養を備えた人で、幼いアーレントは父の本をよく読んでいたと言います。

そんな父親もアーレントが7歳の時に病気で亡くなってしまいました。その後母親は再婚しますが、複雑な家庭事情からかアーレントは孤独感に苛まれた幼少期を過ごします

勉強に関してはとても優秀なアーレントでしたが、高校生の時には若い教師の授業をボイコットし退学処分となるなど、破天荒な一面も持ち合わせていました。

大学で哲学を学ぶ

それでも半年間の独学により、18歳で大学入学試験に合格、マールブルク大学に進学します。大学ではドイツの有名な哲学者マルティン・ハイデガーが教授を務めていたこともあり、哲学に魅了されていきます

その後、フライブルク大学やハイデルベルク大学でエトムント・フッサールカール・ヤスパースといった有名な哲学者からも多くのものを学んでいきました。

アーレントが大学を卒業してまもなくの1931年、ドイツではヒトラー率いるナチ党が国会の第一党を占有し、翌年にはヒトラーが首相となりその力を拡大していきました。

ナチスの台頭により行き場を失う

反ユダヤ主義をかかげ、ユダヤ人迫害を加速させていったナチスに対し、アーレントはシオニスト(ユダヤ民族主義)の運動に参加したり、ドイツからの亡命を望むユダヤ人を援助する仕事に取り組むようになります。

1933年にはフランスに亡命し、活動を続けますが敵国であるドイツ人として逮捕されてしまいます。またフランスがドイツに敗戦したことで今度はユダヤ人として拘束されるなど、歪んだナショナリズムの時代に翻弄されます。

フランスにドイツ軍が侵攻したことで、1941年アーレントはアメリカに亡命し、アメリカでも反ナチスに対する活動を続けました。

全体主義の起源を出版

1951年にはアメリカの市民権を取得し、同じ年に自身の代表的著書である「全体主義の起原」を出版します。この本により、当時まだ無名哲学者あったアーレントの名は広く知られるようになりました。

その後も「人間の条件」や「暴力について」などの著書を残すなど精力的に執筆活動に勤しみます。1963年には「エルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告」を発表すると、ナチズムを擁護する内容であると大論争に発展しました。

その後はシカゴやコロンビア大学などで教授を務め、晩年も教育と執筆に励んだアーレントは1975年に69歳でその生涯を終えることとなりました。

ハンナ・アーレントの名言

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差異を表明し、他と自分を区別することができるのは人間だけである。人間だけが、渇き、餓え、愛情、敵意、恐怖などのようなものを伝達できるだけでなく、自分自身をも伝達できるのである。

組織というのは常に政治的である。組織する場合、人びとは活動しようとして権力を得ようとするからである。

リアリティとは、『ナチは私たち自身のように人間である』ということだ。つまり悪夢は、人間が何をなすことができるかということを、彼らが疑いなく証明したということである。言いかえれば、悪の問題はヨーロッパの戦後の知的生活の根本問題となるだろう。

寛大さは行動と自由への鍵である。

私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。危機的状態にあっても、考え抜くことで破滅に至らぬよう。

考えるとは注意深く直面し、抵抗すること。

世界最大の悪は、ごく平凡な人間が行う悪です。そんな人には動機もなく、信念も邪心も悪魔的な意図もない。人間であることを拒絶した者なのです。そして、この現象を、私は”悪の凡庸さ”と名付けました。

言葉から見た、ハンナ・アーレント てこんな人!

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考えることの大切さを訴えた人

人類史の中で、ユダヤ人は長い間迫害の歴史をたどってきました。特にその流れはキリスト教文化のヨーロッパにおいては顕著であり、キリストを殺害したとされるユダヤ民族に対する憎悪が、大きな起源とされています。

そして長い歴史の中でも最も大きな印象を残したのが、ナチスによるホロコースト(ユダヤ人迫害)でした。そしてアーレントはそんな過酷な時代にユダヤ人として生まれたのです。

幸い、彼女は亡命により命は助かりますが、強制収容所などあまりにも非人道的な行為を目の当たりにしながら、その思考を深く巡らせていきます。そしてそれは代表作となる「全体主義の起源」や「エルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告」に繋がっていくのでした。

ナチスの命令通りに多くのユダヤ人を強制収容所に送ったアイヒマン。アーレントはユダヤ人という立場でも憎悪にかられず冷静に彼の思考と行動を見つめ分析しました。

そして組織の中で思考を止めた人間がもたらす悪、また人間誰しもが自覚のない悪へと向かう可能性を持つ、全体主義の恐ろしさを考察していきます。

私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。危機的状態にあっても、考え抜くことで破滅に至らぬよう。」という彼女の言葉にもあるように、思考を持たないことは人としての弱さに繋がっていき、自覚のない悪へと変化していく。

しっかり自分の思考と意思を持つことが大切である。ハンナ・アーレントはそんな考えることの大切さを訴えた人でした。

ハンナ・アーレントの名言からの学び。[無知は罪となりうる]

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五感で感じて、知り、考える

今回のハンナ・アーレントの名言で印象的だったのが「世界最大の悪は、ごく平凡な人間が行う悪です。そんな人には動機もなく、信念も邪心も悪魔的な意図もない。人間であることを拒絶した者なのです。そして、この現象を、私は”悪の凡庸さ”と名付けました。」という言葉でした。

ナチスが企てたホロコーストの犠牲者はおよそ600万人にのぼったとされています。世界恐慌により経済が大打撃を受け、悲しみ、苦しみなど、人々の負の感情を強く惹きつけたのが、ヒトラーのかかげた「強いドイツを取り戻す」という理念でした。

そしてその思想は過激さを増し、ドイツが弱っている原因をユダヤ人であると決めつけ、それを絶滅させる暴挙にでます。そしてアイヒマンのように上からの命令であれば、無抵抗にその暴挙に加担し、民意も少なからずそれを支持していました。

この強力な世界観を提唱したのはヒトラーですが、それを作り上げたのは、無知と無思想の人々でした。自分が何を考え、何を大切にし、どう生きていきたいのか。それを持たず「なんとなく」の思考や行動、そしてまわりに流され傾倒していく。

これは当時のドイツだけでなく、政治に興味を失いつつある現代にも言えることだと感じます。無自覚な行動により結果的に多くの犠牲者を生んでしまった歴史に学び、常識やまわりの意見だけを鵜呑みにするのではなく、自分の目で見て、感じて、考えることが大切であると、ハンナ・アーレントの名言に触れて感じさせられました。

今日の英語

  • ignorance・・・無知
  • unconscious・・・無自覚