
知識は、すべての進歩と改良の真の源泉である。
スコットランド出身の哲学者、アダム・スミス(Adam Smith)。 「経済学の父」として世界的に知られ、近代経済学の基礎を築いた偉人です。
主著『国富論』(正確には『諸国民の富の性質と原因の研究』)において、自由な市場と、それを導く「見えざる手」の概念を提唱しました。生前はグラスゴー大学やエディンバラ大学で道徳哲学の教授を務め、単なる経済学者としてだけでなく、倫理学者としても高い評価を得ていました。 今回はそんなアダム・スミスの生涯を振り返り、名言を紹介します。
哲学者アダム・スミスとは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介

スコットランドで生まれ、グラスゴー大学で学ぶ
アダム・スミスは1723年、スコットランドのカコリ(Kirkcaldy)で生まれました。生後間もなく、父である税関の監査官を亡くし、母に育てられました。
彼は幼い頃から病弱でしたが、並外れた才能を示し、14歳でグラスゴー大学に入学します。当時の著名な哲学者フランシス・ハチソンから道徳哲学を学び、大きな影響を受けました。 その後、奨学金を得てオックスフォード大学に進学しますが、当時のオックスフォードの教育水準に失望したと伝えられています。
彼はオックスフォードを中退した後、故郷に戻り、エディンバラ大学で修辞学と美学の講義を開始し、徐々にその名を知られるようになります。
『道徳感情論』の発表と、グラスゴー大学での教職
1751年、スミスは28歳で母校グラスゴー大学の論理学教授に就任し、翌年には道徳哲学教授に転任します。彼はそこで12年間教鞭をとり、高い人気を誇りました。この教職期間中に、最初の主要な著作である『道徳感情論』(The Theory of Moral Sentiments)を1759年に発表します。
この本で彼は、人間は共感に基づいて行動し、公平な観察者という心の中の基準によって善悪を判断するという倫理学的体系を構築しました。この著作は大きな成功を収め、スミスをヨーロッパの知識人として一躍有名にしました。
大陸ヨーロッパへの旅と『国富論』の執筆
1764年、スミスはグラスゴー大学の教授職を辞し、若き公爵バクルーの家庭教師としてヨーロッパ大陸を旅しました。この旅で彼は、ヴォルテール、ディドロ、ケネーといった当時の著名な啓蒙思想家たちと交流を持ち、特にフランスの重農主義の思想から大きな示唆を得ました。
帰国後、彼は故郷カコリに戻り、約10年間、思索と執筆に集中しました。そして1776年、歴史的な主著『国富論』(An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations)を出版します。この著作は、市場経済のメカニズムを初めて体系的に論じ、分業の重要性や、個人の利己心が見えざる手によって社会全体の利益につながるという画期的な考えを提示しました。
税関委員としての晩年と、近代経済学の祖となる
『国富論』の成功後、スミスは1778年にスコットランドの税関委員に任命され、エディンバラに移り住みました。彼はこの公職を熱心に務め、生涯独身のまま、母と甥たちと静かな晩年を過ごしました。彼は学問的な論争よりも実務を重視し、晩年は新しい著作を発表することはほとんどありませんでした。
1790年に67歳で亡くなる直前、彼は自分の未発表の草稿や論文のほとんどを焼却するように指示しました。スミス自身は自らを道徳哲学者であると考えていましたが、彼の『国富論』は、近代資本主義の精神的な支柱となり、彼の死後も世界中の経済学、政治、政策に計り知れない影響を与え続け、「経済学の父」として後世にその名を残しています。
哲学者アダム・スミスの名言|短いひとこと名言


いかなる人間も、社会なしには、自分自身を維持することも、人生の快適さを満喫することもできない。

私たちが他人を判断する基準は、私たち自身を判断する基準と異なる。

思慮深さ(Prudence)は、すべての美徳の中で、最も人類に役立つものである。

同感(Sympathy)とは、私たちが、他人のいかなる情念についても、その状況を想像し、自己の心の中に作り出すことである。

いかなる個人も、自己の利益を追求する際に、しばしば社会の利益を、彼が実際にそれを意図する場合よりも、より効果的に増進させる。

富とは、国民が消費する生活の必需品と便益品(快適さ)のことである。

幸せなのか不幸せなのかはすべて心の問題であり、身体が健康か不健康かよりも、心が健康か不健康か、満足か不満足かに大きく左右されるはずだ。

社会に属する人々の大部分が貧しく不幸であれば、その社会が幸福で繁栄した社会となることは決してない。

権力者、富裕層への称賛や崇拝、貧困者、困窮者への軽蔑や無関心は、我々の道徳の退廃の最大にして共通の原因だ。
