哲学者スピノザの名言|短いひとこと名言

哲学者スピノザの名言のイラスト4 偉人の名言

自由とは、必然性に基づく行動のことである。

17世紀オランダの哲学者、バールーフ・デ・スピノザ(Baruch de Spinoza)。 ルネ・デカルトやライプニッツと並び「近代哲学の巨人」と称されます。

ポルトガルから移住したユダヤ系の裕福な商人の家庭に生まれましたが、その独自の過激な思想から24歳でユダヤ教共同体から破門されました。その後はレンズ磨き職人として生計を立て、名誉や富を求めず、ひたすら思索に没頭する静かな生涯を送りました。

主著『エチカ(倫理学)』で展開された「神即自然(Deus sive Natura)」の思想は、後のヨーロッパ思想に計り知れない影響を与えました。 今回はそんなスピノザの生涯を振り返り、名言を紹介します。

哲学者スピノザとは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介

哲学者スピノザの名言のイラスト1
  • アムステルダムのユダヤ人社会に生まれる
  • 24歳でユダヤ教共同体から破門される
  • レンズ磨きで生計を立て、思索に専念する
  • 死後に『エチカ』が刊行され、後世に影響を与える

アムステルダムのユダヤ人社会に生まれる

スピノザは1632年11月24日、オランダのアムステルダムで生まれました。両親は、ポルトガルでのユダヤ人迫害から逃れてきた「セファルディム」と呼ばれるユダヤ系移民の子孫でした。

父ミカエルは成功した貿易商で、スピノザ家はユダヤ人社会で一定の地位と富を持っていました。 幼少期から学問の才能を示したスピノザは、ラビ(宗教的指導者)となるための教育を受け、ヘブライ語の聖典やユダヤ哲学を学びました。

しかし、家業を手伝うために高等教育は受けず、独学でラテン語やデカルト哲学といった当時の最先端の学問に触れていきました。この自由な探究心こそが、やがて伝統的な信仰観念からの離脱を招くことになります。

24歳でユダヤ教共同体から破門される

スピノザの思想は次第にユダヤ教の正統的な教義から逸脱していきました。彼は、聖書は歴史的な文書であり、神が人格的な存在として奇跡を起こすという伝統的な見方に疑問を投げかけました。

この過激な思想は共同体にとって大きな脅威となり、彼はまだ一冊も著作を発表していないにもかかわらず、1656年7月、24歳で破門されます。 この破門は、ユダヤ人社会からの全面的な追放を意味する最も重い刑罰(シャーマッター)でした。

彼は家族、友人、財産をすべて失いましたが、この孤独と引き換えに、思想の自由を獲得しました。彼はこの経験を経て、いかなる権威にも縛られない理性に基づいた独自の哲学体系を構築し始めます。

レンズ磨きで生計を立て、思索に専念する

ユダヤ人社会を追放されたスピノザは、俗世的な名誉や富を求めず、光学レンズを磨く職人として生計を立てました。望遠鏡や顕微鏡用のレンズを製作する技術は非常に高く評価され、当時の著名な科学者たちとも交流がありました。

彼は友人の家に下宿しながら、レンズ磨きで得たわずかな収入と、パトロンからの寄付のみで質素な生活を送りました。彼の生涯の目的は、哲学を通じて「真の善」を探求することでした。

彼は、学識を得ることを妨げると考え、ハイデルベルク大学などからの教授職の招聘も辞退しています。この禁欲的な生活の中で、主著『エチカ』などの重要な著作が執筆されました。

死後に『エチカ』が刊行され、後世に影響を与える

スピノザの哲学の核心は、神と自然を同一視する「汎神論」(万有内在神論)にあります。彼は、すべてのものが唯一の実体である「神(自然)」の必然的な様態であるとし、人間が不安や受動的な情動から解放され、理性的な認識によって「自由」に至る道筋を幾何学的(公理と定理)な方法で示そうとしました。

彼の過激な思想は生前は危険視され、『神学・政治論』は匿名で刊行されたものの禁書扱いとなり、主著『エチカ』は完成していたものの出版を断念しました。彼は1677年、肺病のため44歳で短い生涯を閉じます

彼の死後、友人たちによって遺稿が出版され、『エチカ』が世に出ました。当初は激しい論争を呼びましたが、後にゲーテやヘーゲルといった偉大な思想家たちによって再評価され、「近代哲学の巨人」として確固たる地位を築きました。

哲学者スピノザの名言|短いひとこと名言

哲学者スピノザの名言のイラスト2

あらゆるものは神のうちにある。そして、神なしには、いかなるものも存在することも考えられることもできない。

人間が自分の情念に左右されるかぎり、彼は自分の主人ではなく、偶然の支配下にある。

幸福とは、徳の褒賞ではなく、徳そのものである。

人間をばかにしたり、嘆いたり、嫌悪したりせずに、ただ理解すること。

精神の最高の満足は、神あるいは自然の認識である。

平和とは、戦争がないことではない。それは、魂の力から生まれる徳である。

人間が獲得できる最高の行いは、理解することを学ぶことである。

今日の英語

  • coincidence・・・偶然
  • peace・・・平和