仁は人の心なり。義は人の路なり。
古代中国の思想家、孟子。
孔子の孫である子思から儒学を学び「人の本質は善である」とする性善説を唱えたことで有名な思想家です。儒教の中では始祖の孔子に次いで重要な人物とされ「孔孟」とも表現されています。
今回はそんな孟子の名言を紹介し、その言葉たちからの学びである「身近な人に心を寄せる」について考察しました。
孟子とは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介
古代中国に生まれる
孟子は紀元前372年ごろ(正確な年代はわかっておらず、孔子が亡くなっておおそ100年後)に鄒国、現在の山東省で生まれます。
孟子の父親は彼が幼い頃に亡くなってしまったため、主に母親に育てられることとなりました。
母親は孟子に対してとても教育熱心で、その時のエピソードが教訓として語り継がれています。
孟子の母親の有名な教育法「孟母三遷」
当時、家族は墓地の近くに住んでいました。すると孟子は葬式の真似事をし始めます。それを見た母親は市場の近くに引っ越すことを決めます。
すると孟子は市場の商人の真似をするようになったので、再び引越し、今度は学問所の近くに住むようになりました。
それから、孟子は学問に励むようになったと言われています。この物語は史実ではないとされていますが、孟母三遷として語られ、環境が子供の教育に大きな影響を与えると説いています。
孟子の母親の有名な教育法「孟母断機」
またある時、孟子が学業を途中で辞め、家に帰ったことがありました。母親は織物を織る仕事をしていて、孟子が帰った時は仕事の最中でした。
母親はおもむろに織物を刀で切断するると、その布を孟子に見せ「学問を途中で投げ出すことは、織りかけの織物を断ち切るのと一緒である」と戒めます。
このエピソードは「孟母断機」と呼ばれ、この母親の戒めにより、孟子は反省し再び学問に打ち込むようになったと言われています。
性善説を説き、王道政治を提唱
その後儒学の道に進んだ孟子は、孔子の孫である子思の門人から儒教を学びます。そして人は誰しも天から与えられた徳性を持っており、本質的には善なる存在と考える性善説を説きます。
また孔子の仁の思想から発展させた仁義を説き、力で支配するそれまでの覇道政治ではなく、仁義を持ち民を尊ぶ王道政治を提唱しました。
孟子はこの思想を当時の戦国時代に必要だと考え、国々をまわりうったえかけますが、この考えはあまり受け入れられなかったといいます。晩年は故郷に戻り、弟子の教育などに専念した孟子は84歳でその生涯を終えました。
孟子の名言
力をもって人を服するのは、心から服するにあらず。徳をもって人を服するは、喜んで真に服するものなり
自分で反省してみて間違っていると思うならたとえ相手がどんな賤しい身分であっても学ばなくてはいけない。自分で反省してみて正しいと思うなら相手が何千万人の大勢であってもおそれず進んでいくがよい。
天が人に大任を授けようとするときは、必ずまずその人の身心を苦しめ、窮乏の境遇におき、何を行ってもすべて失敗をさせて、わざわざその人を鍛えるものなのである。つまり、不運は天の試練として受け止めるべきものなのである。
わたしは人生を愛し正義をも愛する。しかし、その両者を共に持つことはできぬとしたらわたしは人生を放棄して正義を選ぶであろう。
天下の基本は国にある。国の基本は家にある。家の基本はわが身の修養にある。
他者にお仕えするということで、どれが最も大切かといえば、親に仕えることが最も大切である。何かを守るということでどれが最も大切かといえば、自分の身を正しく守り、人としての道を外れないことが最も大切である。
孝子の極致は、その親を尊ぶより大きなものはない。また、親を尊ぶ極致は、天下の富を傾けて親に孝養を尽くすより大きなものはない。
言葉から見た、孟子てこんな人!
正義を信じ伝えた人
儒教の世界では始祖である孔子に並び称されるほどの思想を残した孟子。人は生まれながらにして善であるとした性善説や、武力ではなく、仁や徳をもって民を治める王道政治を提唱しました。
孟子が生きた時代は群雄割拠の戦国時代。どこの国も武力に頼り、他を侵略していた世の中でした。そんな時代だからこそ大切なものは人を尊ぶ仁義の心だと確信した孟子は各国をまわり、自分の思想を伝えて歩きました。
しかし、そんな時代背景もあってか、彼の考えはあまり受け入れられることはありませんでした。それでも孟子は自分が信じた思いを伝え続ます。それは孟子が人として生きる上で大切なもの、正義と呼べるものを自分の中に明確に持っていたからでした。
「わたしは人生を愛し正義をも愛する。しかし、その両者を共に持つことはできぬとしたらわたしは人生を放棄して正義を選ぶであろう。」
当時受け入れられなかった孟子の思想も、時を経た後の世では儒教の主流思想として語り継がれています。
正義を信じ伝えた人。それが孟子という人でした。
孟子の名言からの学び。[身近な人に心を寄せる]
一番身近な人たちを大切にする
今回の孟子の名言で印象的だったのが「他者にお仕えするということで、どれが最も大切かといえば、親に仕えることが最も大切である。何かを守るということでどれが最も大切かといえば、自分の身を正しく守り、人としての道を外れないことが最も大切である。」という言葉でした。
最近のニュースをみても、虐待やDV、家族間の殺人など様々な悲しいもので溢れています。
世界、国、地域、家庭、今世の中に起こっている問題も規模は違えど、突き詰めると家庭で起きている問題に起因していると感じさせられます。「家庭は社会の縮図」とも言えるかもしれません。
血はつながっていても、自分以外の人は「他人」です。ボランティアや寄付、助け合いなど、人は他人を思いやることができる存在です。
しかし「灯台下暗し」ということわざにもあるように、遠くの他人を思いやることも大切ですが、一番身近な存在に心を寄せることを忘れてはいけないと、今回の孟子の言葉に触れて感じさせられました。
一番身近な親や兄弟、友人などを大切にすること。家庭が社会の縮図であるならば、身近な人を大切にし、家庭を良くしていくことが、その先の社会が良くあることにつながるのかもしれません。
一番身近な人たちを大切にする
古代中国の思想家、孟子の名言からそれを学びました。