愛は、人と人を結びつける力なのです。
ドイツの社会心理学者、エーリッヒ・フロム。
「自由からの逃走」や「愛するということ」などの世界的ベストセラーの著者としても広く知られています。
今日はそんなエーリッヒ・フロムの名言を紹介し、その言葉たちからの学びである「愛せないものを愛する」について考察しました。
エーリッヒ・フロムとは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介
厳格なユダヤ教徒の家系に生まれる
エーリッヒ・フロムは1900年にドイツのフランクフルトで生まれ、両親はユダヤ人でワインの商人をしていました。また両親の家系は両方とも熱心なユダヤ教家系でもありました。
そんな信仰的で真面目な家庭に育ったフロムは、幼い頃はユダヤ教の研究者になろうと思っていました。しかし12歳の時、好意を持っていた年上の女性が父親の病死のあとを追って自殺してしまうという出来事に見舞われます。
その時から人を死に至らしめることもある愛情の存在や人の心理に興味を抱くようになります。その後ドイツの中高一貫の教育機関であるギムナジウムを卒業し、地元のフランクフルト大学に入学します。
大学で学び精神分析学の世界へ
フランクフルト大学では主に法律を学びますが、一年足らずでドイツ最古の大学であるハイデルベルク大学に入学しました。
ハイデルベルク大学では社会学を中心に学びながら、次第にその関心を心理学や哲学などに移していきます。
大学卒業後はベルリンで精神分析学を学び、研究者となります。そして30歳の時にフランクフルト大学にある社会研究所の研究員となり、精神分析の研究を続けました。
ナチスの台頭からアメリカへ亡命
研究所でのフロムの研究や論文はフランフルト学派だけでなく、ドイツの心理学界に大いに貢献を果たします。
しかしこの時期にドイツで台頭してきたのが、ヒトラー率いるナチス党でした。次第にナチスは反ユダヤ主義を掲げ、大規模なユダヤ人迫害を行うようになります。
ユダヤ人であったフロムもそれに伴いスイスに移住し、その後アメリカへ亡命することとなります。アメリカではコロンビア大学などで講師となり、1941年には代表作となる「自由からの逃走」か刊行されました。
「愛するということ」の出版。晩年はスイスに移住
1950年にはメキシコに移り、1965年までメキシコ大学の教授を務めました。また1954年には一般的にも広くその思想が認知されつようになった「愛するということ」が出版されました。
1974年、晩年のフロムは再びスイスに移り住むこととなります。そこで「生きるということ」などを執筆、出版するなど精力的に活動を続けました。
そして1980年に80歳の誕生日も目前に、心臓発作により自宅で息を引き取りました。
エーリッヒ・フロムの名言
尊敬とは人間の姿をありのままにみて、その人が唯一無二の存在であることを知る能力である。
たくさん持っている人が豊かなのではなく、たくさん与える人が豊かなのだ。
愛は、人間の実存という問題への、唯一の健全で満足のいく答えである。
愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。愛とは信念の行為であり、わずかな信念しかもっていない人は、わずかしか愛することができない。
一人の人をほんとうに愛するとは、すべての人を愛することであり、世界を愛し、生命を愛することである。
「愛されるから愛する」というのは幼稚な愛です。「愛するから愛される」というのが成熟した愛なのです。
自分の役に立たないものを愛する時にはじめて、愛は開花する。
尊敬とは人間の姿をありのままにみて、その人が唯一無二の存在であることを知る能力である。
言葉から見た、エーリッヒ・フロムてこんな人!
人間の心理を愛と説いた人
ドイツを代表する社会心理学者、エーリッヒ・フロム。彼の代表作であり、世界的なベストセラーともなっている「愛するということ」は現在でも多くの人に読み継がれている名著です。
今回ピックアップした名言たちも「愛するということ」からの抜粋が多くありました。「愛」という人間にとって普遍的なものをフロムは「技術」でありスポーツや勉強などと同じように、学び行動して習得するものであると考えました。
愛は人生を通して学び育てるもの。人間をカタチ作るものが愛そのものであると考えたフロム。
それは彼の「愛は、人間の実存という問題への、唯一の健全で満足のいく答えである。」という言葉からも感じ取れます。
人間の心理を愛と説いた人。それがエーリッヒ・フロムという人でした。
エーリッヒ・フロムの名言からの学び。[愛せないものを愛する]
愛せないものを愛する努力をする
今回のエーリッヒ・フロムの名言で印象深かったのが「自分の役に立たないものを愛する時にはじめて、愛は開花する」という言葉でした。
人間は誰しも得意、不得意。合う、合わないを持ち合わせている生き物です。これらと同じく「愛する」ことにも易しい、難しいが存在し、それは流動的であると感じます。
性格や好みが自分と合えば愛しやすく、反対に価値観などが違えば愛すことが難しい。自分に当てはめて考えてみても、愛しにくいと感じる人は何人か思い当たります。
フロムのこの言葉を見た時、「自分に役に立たない」むしろ不利益になったり不快な感情を抱きそうな人こそ愛することが大切があり、それができて初めて本当の愛と呼べるのだと感じさせられました。
過去の偉人をみても、非暴力で独立を成し遂げたガンジーや、人種差別を非暴力で訴えたキング牧師は、自分に危害を加える人で達も許し愛する世界を持っていました。そしてその愛が結果的に相手から武器を放棄させるまでなったのです。
フロムは愛は習得するものと言ったように、その愛するとい努力が人間の人格や人としての深さをつくっていくのだと感じさせられます。
愛せないものを愛する努力をする。
人間心理の側面から愛を説いたエーリッヒ・フロムの名言からそれを学びました。