あなたが始めるべきだ。他の人が協力的であるかどうかなど考えることなく。
オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラー。
同時期に活躍したフロイトやユングと並び心理学の3大巨匠の一人とされています。日本では「嫌われる勇気」という本がベストセラーとなりアドラー心理学が注目されました。
今日はそんなアドラーの名言を紹介し、その言葉からの学びである「信頼とは無条件」について考察しました。
アルフレッド・アドラーとは?どんな人? 生い立ち・生涯・経歴を紹介
病弱な幼少期
アドラーは1870年オーストリアの首都ウィーン郊外の街で生まれます。両親はユダヤ人で父親は穀物商を営んでおりアドラーは6人兄弟の次男として育ちます。
幼少期のアドラーは病弱で骨の病気である”くる病”などに苦しみます。また弟が生後1年でジフテリアという感染症で亡くなります。これらの経験により子どもの時からアドラーは医者になろうと考えます。
1888年にウィーン大学の医学部に入学、7年後に卒業するとユダヤ人の下層階級の人々が住む地域で診療所を開きます。その地域では大道芸など自分の体一つで生計を立てている人が多く、またその中には幼少期の身体的弱点を克服しながら生活している人たちもいました。
彼らとの触れ合いによりアドラーは思考を深め、この経験がのちに提唱する器官劣等性へとつながっていきます。
フロイト理論への賛同と対立
1898年には自身の最初の著書を刊行し、医学の正しい知識を通じて社会をよりよくしようと考えます。またこの時期にフロイトの理論についても熱心に勉強し、賛同的な立場にいました。
その後そのフロイトに招かれ、フロイトの研究グループに参加します。これをきっかけにアドラーは精神分析と接点を持ち、ウィーン精神分析協会の議長にも就任します。
しかし次第にフロイトと対立することが多くなり、1911年に自由精神分析協会を設立し、独自の個人心理学へ傾倒していきます。
実践的な心理学で教育にも携わる
1914年に第一次世界大戦が始まるとアドラーも軍医として戦地に向かいます。多くの傷ついた患者と対する中で、共同体感覚の重要さを見出し、それが自身の個人心理学の基礎になると考えました。
終戦後の1922年には児童相談所を設立、また同時に児童教育にも精神医学や心理学が役立つことを伝える活動を始めます。
診療の他にも講演や執筆活動などを精力的に行い、アドラーの名前は国際的にも有名になっていきました。1926年にはアメリカで数ヶ月間にわたり各地で講演を行い、高い評価を得ます。
67歳で亡くなる
その後、次第にアメリカでの活動が増えていくようになりました。そして1935年にアメリカへ移住し医科大学で心理学の教授や大学付属の診療所で指導も行うようになります。
しかしその2年後の1937年にヨーロッパでの講演活動の最中、突然亡くなってしまいます。死因は心臓発作でアドラーは朝ホテルから散歩に出掛けた直後に意識を失い、そのまま搬送される救急車の中で息を引き取ったと言われています。
遺体は母国オーストリアのウィーン中央墓地に名誉埋葬されました。
アルフレッド・アドラーの名言
この世界にはいかなる権力者でも強要しえないものが2つだけある、それが尊敬と愛です。
われわれ人間はわかり合えない存在だからこそ、信じるしかないのです。
条件付きで信じることが信用であり、一切の条件をつけずに信じることが信頼である。
何より危険なのは、何が善で何が悪であると、中途半端な「正義」を掲げる事です。
自分の人生を決定するのは「いま、ここ」を生きているあなたです。
大切なのは、何が与えられているかではなく、与えられてものをどう使うかである。
ほんとうの愛を知った時、「わたし」だった人生の主語は、「わたしたち」に変わります。
アルフレッド・アドラーの名言を引用・参考にした文献
言葉から見た、アルフレッド・アドラーてこんな人!
過去にも未来にもとらわれない今を見つめた人
アドラーは彼の言葉にもあるように今、この瞬間に最大の価値を見出していました。
それは彼の思想である目的論にもつながります。アドラーは過去の出来事が現在の自分をつくっているというフロイトの原因論を否定し、過去は自分の望む解釈でしかなく、現在の自分の態度により全ては変えられると考えました。
過去にとらわれるのではなく、現在にだけ目を向け行動する。
それはアドラー自身が苦しい幼少期を経験したり、障害のある人の診察や、戦争での体験などにより構築された考えなのかもしれません。そんなアドラーの心理学は現代の人にも勇気を与え、未来への希望を生み出しています。
過去にも未来にもとらわれない今を見つめた人。それがアルフレッド・アドラーでした。
アルフレッド・アドラーの名言からの学び。[信頼とは無条件]
理解じゃなく受け入れる
今回のアドラーの名言で強く心の残ったのが、「われわれ人間はわかり合えない存在だからこそ、信じるしかないのです。」という言葉でした。
個人、社会、国。規模は違えど悩みの多くはその間にある関係性です。アドラーは人間の悩みは全て人間関係であると言い切るくらい、いつの時代も人間関係というのは人を悩ませる難しい問題です。
良い関係を築くにはお互いのことを「理解」することが大切。そんなフレーズもよく聞かれますが、この理解することって、はたしてできるのかなと疑問を感じます。
自分ごとですが、僕がヨーロッパをバックパックで旅をしていた時、いろんな国の人に出会いました。文化や習慣も違う中で、ちょっとした生活の中にも違いがたくさんみえ、相手のことを心から理解することの難しさを感じさせられました。
理解とは自分の思考に相手を当てはめることであり、自分の思考の枠にはまらなければ、わからないになります。そもそも違う人を心から理解すること自体、全く同じ人間でない限り不可能なのではないかと僕は思います。
そうであるなら理解を諦め、信じて受け入れる。
難しいことですが、そう解釈できた時、無駄な悩みや悶々とした時間が軽減されました。アドラーは条件なく信じることが信頼であると言ったように、理解よりも相手を受け入れ、自分からまず信じることが大切なのだと、アドラーの言葉に触れて感じました。
人を信じ今を生きた心理学の巨匠アルフレッドアドラーの言葉からそれを学びました。